組織は「コンテンツ」では変わらない。変わるのは、会話のつくり方、構造を見たときだ

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ダイバーシティ研修をやった。理念を掲げた。スローガンも浸透させた。
それでも組織が変わらない、という声をよく聞きます。

なぜそうなるのか、ずっと考えてきたんですが、ある時に腑に落ちた答えがあります。
それは「組織は情報の入れ物ではなく、会話の生きものだ」ということです。

つまり、「正しい内容を届ければ変わる」のではないのです。
「会話の構造そのものが変わらなければ、何も変わらない」のです。

会議で誰が最初に話すのか。
誰の発言に空気が動くのか。
誰の違和感は”重要な論点”になり、誰の違和感は”個人の感情”として処理されるのか。
誰が説明を求められ、誰は説明しなくても理解されたことになるのか。

組織の本質は、こうした日々の対話の分配に現れます。
ここが、研修や制度だけを整えても組織が変わらない理由の核心だと思っています。

OTD(Organization Transformation by Diversity)の観点から見ると、これはかなり鮮やかに説明できます。

会社の会議、1on1、Slack、評価面談、朝会、雑談。これらはすべて「組織の公共圏」です。そこで起きていることは単なる情報共有ではなく、誰の経験が”知”として数えられるかの交渉なんです。

ダイバーシティ推進が形骸化するのは、多様性を「学ぶべきコンテンツ」にしてしまうからです。
ポスターの言葉でも、動画教材でも、年に一度の研修テーマでもない。
多様性とは、組織の中で誰が人間として扱われ、誰の経験が知として認められ、誰の声が意思決定に届くかという構造そのものです。

女性比率、外国籍比率、障害者雇用率、LGBTQ+理解度。それらはもちろん重要です。
しかし本当に問うべきは、その先にあります。

「この組織では、違う背景をもつ人が安心して話せるか」
「話した内容が、ちゃんと扱われるか」
「“空気を読む側”ばかりに負担が集まっていないか」

ぼく自身、組織の中で「声を上げよう」という掛け声だけが増えていく場面を何度も見てきました。
でも、発言機会を増やすだけでは足りないんです。必要なのは、聞いたあとに意思決定が変わること。つまり「傾聴の制度化」です。

匿名サーベイを取ることではなく、結果をどう扱うか。
1on1を実施することではなく、そこで出た声が評価制度やマネジメントにどう反映されるか。
心理的安全性を掲げることではなく、実際に異論を言った人が不利益を受けないか。

組織変革は、発信の量ではなく、聞いたあとに何が変わるかで測られます。

そしてもうひとつ、大事なことがあります。
変革を専門家だけに任せることはできない、ということです。

人事、経営、外部コンサル、DE&I*担当者。彼らは重要です。しかし、彼らだけでは足りません。
なぜなら、組織の不均衡は制度の外側ではなく、日常の内側で起きているからです。

*DE&Iは「Diversity」「Equity」「Inclusion」の頭文字

排除の経験をもつ人、周縁に置かれてきた人、説明を強いられてきた人。
その人たちの語りは「感想」ではありません。組織変革に必要な、もっとも重要な一次データのひとつです。

ここで少し立ち止まって考えてみてほしいことがあります。

組織にはしばしば「昔のほうがまとまっていた」という幻想があります。
でも、その”まとまり”は、誰かの沈黙の上に成り立っていなかったでしょうか。
意見の対立が少なかったのではなく、対立を口にできなかっただけではなかったでしょうか。
礼儀正しかったのではなく、異論を差し出す資格が一部の人にしかなかっただけではなかったでしょうか。

静かな組織が、健全な組織とは限りません。
むしろ、異なる声が現れ始めたとき、違和感や摩擦が生まれるのは自然なことです。それは分断の証拠ではなく、これまで見えなかった現実が見え始めた兆候です。

多様な人が本当に参加し始めると、最初に起こるのは「調和」ではなく違和感の可視化です。
そこを「面倒」「不穏」「空気が悪い」で封じると、変革は止まります。

ぼくたちが目指すべきなのは、衝突のない組織ではありません。
衝突を沈黙で終わらせない組織です。
違いをなかったことにせず、よりよい問いへ変えていける組織です。
“誰が正しいか”より先に、“誰の現実が、まだこの場で数えられていないか”を問える組織です。

開かれていて、包摂的で、公平で、互いの違いを”管理対象”ではなく”学習資源”として扱える組織。

組織は、コンテンツでは変わらない。会話のつくり方で変わる。
そして会話は、放っておいても育たない。設計され、守られ、更新されなければならない。

ダイバーシティとは、属性の話ではない。
よりよい会話が可能な組織をつくることだ。
OTDは、そのための思想であり、実践です。

唯一無二の組織文化というのは、制度を整えれば自動的にできるものじゃないんです。
会話の構造を深く掘り下げた結果として、少しずつ育っていくものだとぼくは感じています。

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